覗くこと覗かれること
最近、安部公房の【箱男】を読みふけっている。
電車の中とかで読んでてその描写はスパッと真剣で切られたような気分になる。
冬だからかな。でもその切られ心地は気持ちいいのです。マゾかな。
元々はカメラマンだった男が箱を被って街を小窓から覗く。
”見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある”
”小さなものを見つめていると、生きていてもいいと思う。
雨のしずく……濡れてちぢんだ革の手袋……
大きすぎるものを眺めていると、死んでしまいたくなる。
国会議事堂だとか、世界地図だとか……”
繊細で鋭い描写。カメラマンならではの暗室の描写があって、すごいの。
“写真家っていうのは根が下衆だからな”
って箱男は言われるんだけど、確かにカメラマンだった時に撮ってたものは
風景とか人物とかじゃなく、 スキャンダラスで淫靡なものばかりだった。
私は、報道写真家ってのは下衆だと思っていた。
今も報道被害や報道倫理についてきちんと考える必要があると思う。
でも・・・私も下衆な野郎に成り下がってしまったのだろうか。
覗かれることには慣れてない。
ファインダー覗くだけの立場になりたくて、写真を撮る。
撮ることには愛があるが、撮られることには憎悪がある。
最近やっと慣れてきたけどやっぱり自分の写真を
どう処理したらいいかわからずにいる。